永遠の約束-約束のはじまり-
綺羅の言葉にハッと視線をテレビのデジタルに目を向けてから美恵子は、驚愕の表情を浮かべ、バタバタと走ってリビングを出て行ってしまった。
出て行った後からは、バタバタと慌しい音と「陸~、遅刻遅刻!」と言う美恵子の声が聞こえてきた。
(……全く……、毎日、慌しい………)
綺羅が呆れていると、チンッ!という音と共にパンが焼きあがった。
トースターから出していると、途端にバタバタというよりドタドタという感じのさっきよりも慌しい音が鳴り響く。
音はどんどんと大きくなってきたかと思うとバンッと勢いよくリビングのドアが開いた。
「どうして、起こしてくれなかったんだよ~。兄貴も自分が起きる時は、俺がまだ寝てるなら起こしてくれよ!」
勝手なことを言い放つ寝癖をつけたまま、カッターとブレザーを適当に羽織った状態の陸。
(こいつは………一体、何様なんだよ)
冷たい視線だけを陸に向け、綺羅は黙々と食パンをかじる。
「ごめんなさい。つい、陸のこと忘れてて。でも、陸もお兄ちゃんのように自分で起きれるようになってもらわないとね」
美恵子の注意に苦虫を噛み潰したような顔で、傍に置いてあった綺羅の皿からウインナーと残りのパンを取ると、陸はそのまま玄関まで直行した。
「あいつ………」
自分の皿の上にはレタスときゅうりとプチトマトと目玉焼きだけが残されており、大好きなメインのウインナーを奪われた綺羅は静かな怒りのオーラを漂わせていた。