永遠の約束-約束のはじまり-
確か、誰も近づかないこのプレハブの中に進入し、一番奥の壁に自分の名前を残すことができたら、何でも願いが叶うとか。
妙な噂を勝手に作りやがって。
そんなこと叶うはずなどないのだ。
このプレハブにいるのはおそらく悪霊。
たとえ、その噂どおりに願いが叶ったとしても、それは自分の命と引き換えにしなければいけないのだろう。
願いが叶ったところで自分の人生も終わりだ。
だけど、そんなことなど知らないものは好奇心から怖いもの見たさで試すのだろう。
悪霊がここにいるなんて思うもののほうがごく少数だ。
近づかないとしても、それは悪霊が見えるからとかではなく、ただ単に人間としての勘が働いているにすぎない。
「それで…結界か………。いいんじゃねぇの? 余計な犠牲者がでなくて」
「そ、そう?」
綺羅に褒められて素直に喜ぶ真里。
「本当なら、ここにいる悪霊も倒してしまうのが一番いいんだと思うんだけど、そこまでの能力は私にはないし………。私も深青ちゃんみたいに攻撃と防御、両方の力を兼ね備えていたらな~…。って、深青ちゃん程の力じゃないと悪霊退治なんてできないよね」
『へへっ』と笑う真里を見ながら、綺羅は『確かに』と一理思うところがあった。
確かに、もちろん深青ほどの力はないが、それでも防御と攻撃の力を持つということは何か対処をできるというものだ。
真里のいう防御だけでは防ぐことしかできないが、一方綺羅の攻撃だけでも防御ができない以上、攻撃をかわすことができない。
だからこそ、綺羅は何か手を出すことができず逃げるしかなかったのだが………。