永遠の約束-約束のはじまり-
「俺だって信じられなかったさ」
綺羅は心の底から響くような声で呟く。
あの時、小学六年生になってすぐにやっと貯めたおこずかいで一人で電車を乗り継いで如月神社に行った。
だけど、そこにいたのはすでに別の人物だった。
そこで聞かされたのは、自分が引っ越してすぐに深青の父親が死に、一家全員でどこかへと引っ越してしまったということ。
やっと、会えると思ったその願いはあっさりと砕かれた。
そして、もう会えないかもしれないという事実の重みだけを綺羅は受け入れなければいけなかった。
次の神主としていた人は、深青の父親は急死だったと教えてくれた。
確かに、綺羅の記憶にある深青の父親は病気を患っているようにも見えなかった。
幾分落ち着いてきたのか、真里は綺羅のことをゆっくりと見る。
「だから、深青ちゃんたちは引っ越しちゃったのね」
「そうだろうな」
まるで他人事のように綺羅は答えた。
「そっか。そうなら、この力を私は大切にしなくちゃ。せっかくおじさまが教えてくれたことだもん。この力が私にとってはおじさまの形見になる」
まるで大切なものでも握り締めるように真里は自分の両手を握り締めた。
その姿を見た綺羅もまた自分の両手を見つめる。
形見…か………。
そんな風に感じたことなど、これまで一度もなかった。
ただ、もう如月神社は、昔のようにみんながいる場所ではないという事実だけが自分にのしかかっていた。