妹は芸能人
「すいません。一緒に来てもらえますか?」
彼女のことを あつしは知らない。
しかし、あつしは 彼女に はっきりとは判らないが、何か唯と通じるものを感じ、不信に思いながらも ついていくことにした。
あつしが連れていかれたのは小さな川に架かる小さな橋の上。
「あれを見て」
少女が指差す先を あつしが見る。
小さなものが あつしに向かって飛んで来る。
「とんぼ?」
その物体は あつしの目の前50センチ程で空中に止まった。
「これは、ロボット」
飛んできたのは とんぼ型のロボットであった。
回路が見え、周期的に光が走る。
「動かないで」
少女の声と共にロボットから3本のケーブルがあつし に向かって伸び始めた。
「大丈夫。動かないで」
驚き、避けようとするあつしを 少女の冷静な声が制する。
髪の間を通り、頭に接続されたケーブルの表面を光が数回往復した後、トンボ型ロボットの小さなスピーカーから男の声が発せられた。
「やはり、記憶が消されていない。なぜだ」
再びケーブルの表面を光が往復する。
「そうか、記憶を変更する時に小さい時の記憶を消失してしまったのだ。そのため、今回の記憶消去が正常に作動しなかったということか。」
ケーブルが あつしの頭から外された。

「申し訳ない」
トンボ型ロボットが体を前に傾け、謝罪の意志を表す。

「川上唯。正式名称は R3180。彼女はロボットだ。障害が発生し回収することになり、君の記憶からも消去される筈であったが こちらのミスでそれができなくなった。
申し訳ない」
「そんな、ロボットなんて」
「信じられないのも無理はない。のぞみ、見せて上げなさい」
少女が制服の袖を捲ると機械音と共に皮膚がスライドし、光の走る基盤が現れた。
「この少女は、皆雲のぞみ。川上唯の部品を流用して作られたロボットだ。ある男の娘として生活している。」


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