妹は芸能人
のぞみに 会ってから6日。
あつしは 大学に行かず、アパートの部屋で ぼうと天井を眺めていた。

ブルッ、ブルッ

畳の上に無造作に転がる携帯が振動する。

のぞみ からだ。

連絡が取れるように電話番号を のぞみ に伝えてあった。
「今から出てこれますか?」

のぞみ は あつし を呼び出した。
場所は人通りの少ない道の片隅。
のぞみは この間と同じ制服を着ている。

「わたしも回収されることになりました。もう、この部品が使われることはありません。
廃棄処分となります。」
のぞみの声は冷静である。

「わたしの体には唯さんの部品が使われています。わたしで良ければ 抱きしめてもいいですよ。」

あつしは のぞみの体に手をまわし、そっと抱きしめた。
のぞみの体は 唯とは違っていた。
しかし、触れているだけで何か懐かしい感覚がする。

「あっちゃん」

空耳か、それともロボットだから声色(こわいろ)がだせるのか。
唯の声がする。

あつしは 強く のぞみを抱きしめた。
閉じた目から涙が頬を伝う。

「あっちゃん」

あつしは 声を上げて泣いた。

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