妹は芸能人
楽屋の中は恵とあつしの2人きり。
恵は、唯の兄とはいえ男性と部屋の中で2人きりになり緊張していた。
一方、あつし は特に表情をかえることもなく手についたフライドチキンの油を
ウェットタオルで拭き取っている。
高校の時まで親と共に唯とあつし は一緒に生活していた。。
唯は自分の部屋があるにもかかわらず、ほとんど使うことが無く、あつし の部屋にいることがほとんでであった。
そんな唯の影響もあって、あつし は女性と2人きりでも緊張するということがない。
「恵ちゃんはCD出していたよね。確か、唯に貰って入れておいたと思ったけど」
あつし は携帯音楽プレイヤーをバックから取り出し、慣れた手つきで操作を始めた。
「あった、あった。これ、これ」
あつし は液晶画面に表示された曲を恵に見せる。
「そうです。わたしのデビュー曲です。」
「これ、いい曲だよね。恵ちゃんは歌を中心に活動するの?」
「はい、今日もこれからレコーディングなんです。全国ツアーをするのが夢なんです。ところで、あつしさんと唯ちゃんは子供の頃から仲が良かったんですか?」
兄とうまくいっていない恵にとって、唯とあつしの仲の良さはうらやましかった。
「昔から仲はいいよ。ただ、小さい時の事は覚えてないんだけど...」
「えっ?」
「いや、なんでもない。衣装が汚れちゃうからこのエプロンをつけてフライドチキンを食べて。これ、おいしいから」
あつしは恵へ水色のエプロンを手渡した。
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