実の弟に恋をしました。



「……雄司のこと。」


首を傾げるあたしに、慶太さんは苦笑いを浮かべながら小さく呟いた。


そうだった…。

慶太さんは、雄司の同僚だったんだ。

元々、雄司と出会ったのも慶太さん経由だったっけ。


忘れかけていた過去の記憶が蘇り、あたしはギュッと唇を噛んだ。



「…あんなことになって、申し訳ないと思ってる。俺が真弥ちゃんに紹介さえしなければ……」


「そんなっ…慶太さんは悪くないです」


項垂れる慶太さんの肩を、慌てて掴んだ。



確かに…。

雄司のせいで怖い思いは沢山したけど。

思い出したくない出来事もあるけど。


それ以上に、得たものは大きかったから──。


雄司との出会いも、今なら何か意味があったんじゃないかって思えるの。



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