ライオン
ええ、奴はある日私の前に突然現れました。


奴は私の部屋に突然現れて
そしてこう言うんです。



にやにやした顔に
いやらしく歪んだ口元。


私が嫌悪する種類の人間です。奴は。



「何我慢してるんだ?」



そう言ってなおも奴は笑い続けます。



「這いつくばって仕事して、帰ってくれば
この汚ねえ部屋でポツンと1人。


おまえ、この頃自分の顔を鏡で見たことあるか?」



奴にそう言われた私は
鏡で自分の顔を見てみました。



そこには、希望を失い
覇気や生気すらもない30代の男が映っていました。



思わず私は目をそらします。
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