‐最愛‐
歩くにつれ男女の喧嘩の声が
だんだんと聞こえてくる。

私は気になりながらも
下を向きその横を通り過ぎる。


「翔太のあほっっ!!!」


女の人が大声で叫び
走って行く姿が見えた。

「まさかな…」
私はそう思いつつも
顔を上げるとそこには
不機嫌そうにごみ箱を
蹴り飛ばしている
翔太の姿が見えた。

気が付くと私の足は
翔太の元へ向かっていた。

「…大丈夫?」
私は小さな声で呟いた。

翔太は私に気付き
驚きながらも

「あぁ」と言って
スタスタと歩いて行く。


私は黙って翔太の後を
追い服の袖を掴み足を止める。

翔太は不機嫌そうに
「何?」と
呟き私を見下ろす。

「ちょっと…話せへん?」
私はそう言って
翔太の顔を見つめた。

翔太は少し黙って
私の腕を持ち
近くのガレージに
連れて行った。

そして私の腕を離し
翔太は座りこんだ。

私も翔太の前に行き
座りこむ。
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