ウォールフラワー
だからこそ 近づいてみたくなった。

汚れのない瞳を俺に向ける天使。

昨日お前が言ったように 俺が悪魔だというのならお前は天使だよ。

でも悪魔の俺が純粋な天使に近づくのは少し怖かったからちょっとだけ意地悪してみたんだ。

怒った天使はどんな顔をするんだろうって。

恥ずかしがる天使はどんな顔をするんだろうって。

泣きそうになる天使はどんな顔をするんだろうって。


…どんな表情でもその瞳は澄んでいるのだろうかって。

気になって少しだけ意地悪をしてみた。

結果は予想通り…というか期待通りだった。






目の前をみるとそこはもう教材室の前だった。

胸が…高鳴る。

このドアの向こうにはあいつがいる。

子供のように笑うあいつが。


ゆっくりとドアに開ける。

…いた。

古ぼけた椅子にちょこんと縮こまって座るあいつが。


「高橋…」

俺は静かに声をかけ近づいた。

返事は…ない。


でも俺にはわかった。

肩が小刻みに震えている。


…泣いてる。


よく見ると膝の上にぽたぽたと水滴が落ちていくのがみえる。

ズキン…


笑顔を期待していた俺は正反対の状況に戸惑った。

それより…胸が痛い。

引きちぎられるように…苦しくなる。

俺は高橋と同じ目線の高さにしゃがみこんだ。
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