苦いコーヒー
あいつの、声
「苦い。このコーヒー」
「いつもこれで飲んでる」
「だから苦い顔してんだ」
「なんだそれ」
よみがえる記憶。
あいつの声が聞こえる。
苦い顔だ、なんて。
あんなこと言われたの、あいつにだけだ。
…忘れたいのに。
「のどかわいた」
「今日、天気悪いな」
「ぼーっとしてんな」
「泣くな」
…どんな物にも、何をしてても、あいつが浮かぶ。
あいつの姿が、あいつの声が。
どんなに忘れたくてもどんなに嫌な記憶にしたくても。
どうしようもないくらい、そこら中にあいつがあふれてる。