Amy
3
夜、家に帰ると、亜里沙は洗面所で顔を洗っていた。


いつも化粧ばっちりでパパを待っている亜里沙が、夕飯前にもう顔を洗ってるなんて、なんだか変。


私は亜里沙の後ろ姿をまじまじと見た。


濃いグレーのパンツスーツを着て、ストレートの髪を後ろに一本でまとめていた。


いつも、ギャル系のファッション雑誌の完全コピーみたいな、アメリカのセレブかぶれの服装ばっかりの亜里沙が、今日はなんだかキャリアウーマンみたい。


「どこ行ってたの」


私は気になって聞いてみた。亜里沙はハッとしたように振り返った。


ノーメイクの亜里沙は、子どもみたいな顔だった。ほっぺたの肉が豊かな丸顔に、いつもより小さな目。


目のふちが赤く膨らんでいて、亜里沙が泣いていたと分かった。



そのとき、電話が鳴って、私は振動するケータイ画面をのぞいた。歩香からの電話だった。


< 20 / 31 >

この作品をシェア

pagetop