落下点《短編》
部屋にはもう、あたしたち以外のメンバーが集まっていた。

六人でこうして学校外で改めて集まるのは、夏の旅行以来だった。

久しぶりなはずの六人組なのに、こうして集まるとまるで昨日会ったばかりみたいに、あっという間に親密な空気が生まれる。


「…久しぶり!」


そう言って赤い缶チューハイをあたしに手渡す朋也くん。

秋限定、デカデカと書かれたその缶は、あたしの指先をツンと冷やす。

朋也くんの髪は、夏よりもずっと落ち着いた色に変わっていた。


「みんな最近どうよ?」

「何やねんその切り出し方」

「ははっ!…てか、じゃあ近況報告っ!俺、彼女できました〜!!」


すくっと立ち上がり、右手を挙げる忠司くん。

一瞬の沈黙のあと、均等に並べられたボーリングのピンが瞬時に全部なぎ倒されるような騒ぎになった。

実際にお酒の缶何個かは倒されて中身がこぼれ、カーペットには変な模様のおまけがついた。


「ウソやん!?え、なんて言う子!?」

「は〜?忠司くんいつの間に…相手何学部?」

「はいはい、ちょっと落ち着きなさいキミタチ」

「うっわ、ムカつくわ〜」


質問責めに合う忠司くんは始終嬉しそうにニヤけていて、見ているこっちの頬が赤く染まるくらいだった。…といっても、ほとんどがお酒のせいなのだけれど。

その話題のおかげで盛り上がりすぎたみんなは当然お酒のピッチも速くなる。全員が全員、タコみたいに真っ赤な顔をしていた。

陣ちゃんなんて、足の裏まで真っ赤だ。気がついたら靴下を脱ぎ捨てて、忠司くんのベッドで死んでいる。

あたしの隣のサチももう目が半開きで、ロレツがうまく回っていない。彼女の手からカラになった空き缶が転がった。


「じゃあ〜っ!このメンバーでかのじょいてへんの、ちょもやきゅんだけやん!」

「はは、ちょもやきゅんって誰やねん!」


朋也くんは笑って転がった缶を拾い上げる。
それをグイッと捻って潰し、ナイロン袋に放り込んだ。

もうずいぶん減ってしまったお酒。

ビールの最後一本のプルタブをプシュッとならし、お揃いの赤い顔をした忠司くんが言った。


「てか朋也、めっちゃモテるねんで?この前かて告白されとったし!」


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