落下点《短編》
夏には食堂メンバーの六人で、海に行くことになった。友達の親戚のツテで、格安のコテージに一泊できることになったのだ。
まずは近場のスーパーで、少しばかりの買い出しをしていった。その入り口で早速、朋也くんが黄色いフサを手にぶら下げる。
「陣内せんせー、バナナはおやつに入りますか〜!?」
「ははっ、どうでもええけどお前全部食えよ」
お調子者の朋也くんに、いつも冷静に突っ込む陣ちゃん。2人はまさに親友と呼ぶにふさわしいほど、本当に仲がよかった。
浮き輪にビーチボール、それにたっぷりとお菓子(バナナはやめたらしい)を買い込み、準備は万全だ。
一番初めの運転手は陣ちゃん。助手席兼、地図係はあたし。
後ろの席では、バリバリと次々にお菓子の袋が破られていく音と、いつもよりトーンの高めの笑い声がした。
運転手を何人かで交代し、たどり着いた海の青。
その鮮やかな水平線が見えて、テンションは一気に上昇した。みんなそれぞれ、きゃあとかわあとか意味のない言葉を叫ぶ。
車の窓を開けたら、塩の香りが鼻先をくすぐって。
車を止めるやいなや、みんな驚くべき速さで着替えて砂浜へと飛び出した。
熱い砂が素足に食い込む。太陽がチリチリと肌を焼く。少し斜めに立てたビーチパラソル。
「ビーチバレーしようや!」
朋也くんの提案で、3対3に分かれて本気の勝負が始まった。
みんなあまりにも大人気なさすぎて、ちょっと笑えた。
もちろん、あたしもその一人なのだけれど。
結局勝負がつく前に、気合いの入りすぎた朋也くんのアタックのおかげでボールが破裂。空気の抜けたソレはカラカラのするめみたいになって、砂に落ちた。
みんなバカみたいに笑い転げて、砂だらけになって、そこでちょうど、お昼をとることになった。
あたしは焼きそば、陣ちゃんはカレーライス。
「お、これうまいで!食う?」
「食う〜!!じゃあ焼きそばと交換な」
「はーい」
「へーい」
口に運んだ、プラスチックのスプーン。
海の家の具のないカレーライスは、懐かしくて、どこか優しい味がした。
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