落下点《短編》
夜は、砂浜で花火をした。昼間にたんまりと、コンビニで買い込んでおいたものだ。
あんまりにもたくさん買ったものだから、店員のおじさんがライターをサービスでつけてくれた。
「うーわ、ちょっ、あぶね〜!!」
「おい陣っ、こっち向けんなって!」
「仕返しじゃアホ!!」
みんなそれぞれ、両手に花火を持って走り回る。赤、黄、緑。砂の上に飛び交う、光。笑い声。
朋也くんを追いかけ回す陣ちゃんの後ろ背に、笑いながらカメラを向けた。シャッターを押した瞬間、しゅん、と短い音をたてて陣ちゃんの右手の花火が息絶える。
「ね、朋美!こっちも撮ってー!!」
張り上げられた声に振り向くと、構えられたピースサインに満面の笑み。
赤、黄、緑。もしかして今、ものすごく青春真っ只中だね。そんなことを思って、あたしもおもいっきり笑ってシャッターを切る。
賑やかな、色とりどりの花火が片付いた後は、みんなで集まって線香花火生き残り合戦をした。
打ち上げたり、吹き上げたりしたけれど、やっぱりあたしは線香花火が一番すきだ。
「あー、やべ!落ちそう」
「ちょ、震えるから喋んなって」
「「…あ」」
ぽとりと、玉が落ちるあの瞬間のなんとも言えない切なさが、すきだった。
コテージに戻ったら、早速始まるのが飲み会だ。夜はこれからが本番。
このメンバーではもう何回も飲んだことがあるが、みんなたいして強くない。強くないくせに酒好きだから、タチが悪い。
お酒の買い出しは、あたしと陣ちゃんで行くことになった。
気がきくやろ、なんて言っていたけど、みんな絶対行くのが面倒なだけだ。
「…アイツら、押しつけやがったな」
「ははっ!貧乏クジやなぁ」
「俺…夏休み遊びすぎて実際貧乏やねん…」
「…近所のスーパー、モヤシ28円やで。陣ちゃん」
「…モヤシか」
「…モヤシやね」
星空の下。
陣ちゃんと、手をつないだ。
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