落下点《短編》


その夜はやっぱりみんな、阿呆みたいに飲んだくれた。

あたしも許容範囲を超えて缶チューハイを口に運んだものだから、朝の目覚めはそれはそれは最悪だった。



ずきんずきんする頭を起こし、時計を見るとまだ7時前。

記憶にはないが、いつの間にやらちゃんと寝室に戻っていたらしい。目の前には、とても女の子とは思えない寝相でぐっすりと眠りについている友人2人。

…なんていうか、理解の範疇をこえた、ものすごく芸術的な銅像を見ているみたいな気持ちになる。


「…けほっ」


お酒のせいで、水分を持っていかれてしまったのだろうか。

喉にひりひり焼け付くような痛みを覚えて、2人を起こさないようにそっとコテージのキッチンへと向かった。




ズリズリと備え付けのスリッパを引きずりながら向かった先。


「あれっ」


キッチンの冷蔵庫前には、すでにペットボトルを片手に持った先客がいた。

金色に近いオレンジの髪が、ぼんやりした光の中でやけに目立つ。ライオンのたてがみみたいだ。本人いわく、それは"シャンパンゴールド"というオシャレな名前の色らしいけれど。


「朋也くん!早いなぁ」

「トモちゃんこそ!!どしたん?」


目を丸くしてこちらを振り返る朋也くん。陣ちゃんはあたしを呼び捨てにすることが多いけれど、彼はあたしを必ず、"トモちゃん"と呼んだ。


「んー、ちょっと喉渇いてもて」

「俺も俺も!さすがに昨日は飲みすぎたなぁ」


朋也くんはくるりと、片手でペットボトルを回す。そうして、一緒やなぁと笑った。


朋也くんは見た目はライオンみたいなのに、中身は大型犬みたいな、そんなひとだ。猫科と犬科が入り混じった、そんなひと。

たぷたぷとコップにつがれた水が、あたしの頬に押し付けられた。
ひんやりとしみる冷たさが、火照った寝起きの頬には気持ちいい。


しばらくうっとりとしていると、朋也くんはまたたてがみを揺らして、おかしそうに笑った。


「トモちゃん」

「ん?」

「俺ら朋って一緒の字やねんで。…知っとった?」

「え…、ああっ!ほんまやね〜!!言われるまで意識せんやったわ!」


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