涙空
「なんだいなんだい!
俺が入ってちゃダメなわけ?」
「ひゃっ!」
リョウが後ろから抱き付いてきた。
「ぐっぐぐぐぐぐぐぐるじい・・・。」
「あぁ、わりい」とリョウがうちから離れる。
リョウは絵が無茶苦茶だったはず・・・。

「コイツ絵下手なんだぜ!?
コイツの絵見ると、
笑い止まんなくなるんだよな。」
タッキークンが爆笑しながら言った。
だったら美術部入らなきゃいいのに。
でも、うちもそこまで上手いわけじゃない。

「は~い!今日は、見学者が居ます!!
自己紹介お願いします。」
美術担当の~池野神子~先生がうちのほうを見た。
自己紹介しなきゃいけないみたいだ。
「えっと…、櫻井沙里奈です。
絵下手だし、器用じゃないけど、
入るつもりなんで、
宜しくお願いします。」
パチパチとみんなが拍手をくれる。
部員はざっと20人くらい???
そこまで少ないようには見えない。
「じゃ、櫻井さんにモデルやって貰いましょう!!」
「ぇ…??はぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ????」
池野先生のいきなりのドッキリに変な声を出してしまった。
皆がくすくすと笑う。
恥ずかしい。
適当にポーズをとっていると、
池野先生が窓を開けた。

池野「髪のナビキを奇麗に書いてね~。」
池野先生は、並んで座っている生徒の周りをうろうろして言った。
うちの肩より長い赤茶色の髪の毛が、バサバサとなびく。

 いつまでこうしてれば良いんだろう。
時計の針が5:00をさした。
だんだん暗くなってきて、冷えてきた。
風も強い。窓閉めたい。
すると外から、冷たい水が入ってきた。
「…雨???」
そう言って、うちは外に手を出した。
小雨なのかなかなか雨水が手に乗らない。
気のせいだったんだろうか?
3分間じっとしていると、
やっと手に雨水が当たった。
「先生、雨です。」
「え!?雨???じゃ、今日はココまで、
クロッキーブックは置いて行っていいわよ。」
みんながぞろぞろと教室を出て行く。
そして美術室には、
うちと、タッキーくんと、リョウだけになった。
リョウがうちの方に来て言った。
「…一緒に帰る?」
男子と???
「っむ、無理無理無理ィ~~~~!!」
そう言い残して美術室を去っていった。



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