時を越える愛歌

マンションの前にしゃがみ込んだ僕は、ふと思い出す。


柚葉と初めて会った日のことを。



あの時、柚葉は本間にボロボロで、今にも消えてしまいそうやった。

僕が助けな！

心がそう叫んでいた。



そっから柚葉が生きてる人間やない

そう聞いて何度嘘やと思ったか。


それでも僕は柚葉を受け入れた。


このまま素直に柚葉を受け入れたいのに…





那「章大っ！」

章「あ…那都」

那「もう！心配したやんか！(笑)」

章「ごめんごめん。ここ寒いし、家行こ」





そのまま家に入った。

柚葉がいないことぐらい、分かっていたから。




柚葉は何かあった時、泣いている姿を見られたくないから、絶対に外に出る。

外で泣いて、泣き止んでから帰ってくるねん。



ちょっとぐらい、僕やって知ってるねんで…



電気をつけてリビングに入る。

予想通り、柚葉は居なかった。



靴を脱いでいる那都を見る。


柚葉もああやって、靴脱いでたな…



何故か涙が溢れてきた。





那「章大？」

章「何もっ…ないっ…」





僕が笑顔で微笑んだとたん、那都が抱きついてきた。

僕は一瞬戸惑ったが、ぎゅっと相手を抱きしめ返した。



こんなことは…あかんって分かってるのに…