時を越える愛歌
丸「…柚葉?」

柚葉「りゅうへ…くんっ」





泣いている女の子の正体は柚葉やった。

僕を見つめながら、涙を流している。


辛そうに下唇を噛みながら、必死に涙を堪えていた。



章と…何かあった?





柚葉が出て行ってから、僕は那都を抱いた。



苦しみを紛らわせるように

悲しみを隠すように


柚葉を愛したいように…



所詮女はみんな同じ。

僕に近付いて来た女は全員抱いてきた。


僕の腕の中で甘く鳴き、求めるように何度も手をのばしてきた。



でも僕が求めてるのはそんなもんじゃない。

純粋で綺麗な、本物の愛が欲しかった。


僕を本気で愛してくれる、そんな人を探してた。




でも僕が愛してる人は全く僕のことなんか見てなくて、さっきも酷いことをしてしまった。


ごめん、ごめんな



心の中で謝っても意味ないねんな。

ちゃんとその人の前で謝って、ちゃんと自分の気持ちを伝えないと意味がない。





安「…那都」

那「ん?なぁに?」

安「僕な、自分の気持ちを探してみてん」

那「?」

安「さっきまで、心ここにあらずって状態やってん」

那「…」

安「自分の気持ちも分からんかった」





今までの自分を振り返ってみたりしてみた。

愛してきた女を思い出してみたりもした。


それでも本気で愛した女は、誰一人おらんかってん。



誰一人…おらんかった。





安「那都やって、本間は心の隙間を埋めるだけの関係やってん」

那「…」

安「ごめんな、酷いやろ…」

那「何となく…分かってた」





本気で愛してるのは柚葉だけやった。


僕のこと嫌いって思っててもかまわへん。

ただこの気持ちを伝えないと気が済まへん…



僕はゆっくり那都の髪の毛を撫でた。





安「ごめんな…」
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