記憶を持つ者
その穏やかな声を聞いても、心は波立っていた。

学校の歴史で習った、ワールドの仕組みについて。その時に、ワールド間の移動は、王族が他のワールドへ行く以外にはほぼ不可能だと聞いた。

なのに、私は今ここにいる。


「お前は、各ワールドができる前の事を、知っているか?」

「…知らない。始めからワールドがあったんじゃないの?」

「それは違う。
…遥か遠い昔、ここはまだ一つの国だった。
神々が住まう“天界”とは別の、“地界”と呼ばれる国。そこを治めていたのが、我々の一族だ。」


あまりにスケールの大きい話なのに、嘘や神話ではない。

そう思わせるくらいに、白牙の目は真剣だった。
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