記憶を持つ者
すると、私を感情のない目で見ていた魔王が、私に近付いて来た。

咄嗟に白牙の後ろに隠れたのだが


「…うひゃあーー―!!!!!」


一瞬にして、私の横に魔王が立っていた。


「…何とも可愛げのない悲鳴だな。」

「だっ……だって…!?」

「ユイ。一応、魔王だぞ?挨拶くらいしろ。」

「白牙…失礼な奴だな。“一応”ではないぞ。」


瞬間移動は珍しくない事なんですか!?…と、泣きそうなのを堪えて魔王にちゃんと向き合う。


「…初めまして。ユイと申します。」


必死にそう言うと、魔王の口許が緩く吊り上げられた気がした。
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