記憶を持つ者

「ユイ、か。」


はい。と返事をした瞬間、目の前に風が巻き起こり、慌てて手で顔を覆う。

次に目を開けると、部屋の様子が全く違っていた。

いや―――部屋ではなくなっていた。


「な…ここって…外?」


不思議な事が一度に起こり過ぎて、白牙に色々言われたが、自分がどんな存在なのかを理解する時間がない。

時間があったところで、受け入れ切れるかは分からないけど。


「…珍シイナ。コイツ…人ダ。」

「人…アノ、下等ナ?」

「―――!?」


不気味な声に周りを見渡すと、さっき窓から見た“何か”が近付いてくる。


ここは、外。

つまり私は、

―――魔族が蠢く中に立っていたのだ。

< 20 / 97 >

この作品をシェア

pagetop