記憶を持つ者
「ユイ、か。」
はい。と返事をした瞬間、目の前に風が巻き起こり、慌てて手で顔を覆う。
次に目を開けると、部屋の様子が全く違っていた。
いや―――部屋ではなくなっていた。
「な…ここって…外?」
不思議な事が一度に起こり過ぎて、白牙に色々言われたが、自分がどんな存在なのかを理解する時間がない。
時間があったところで、受け入れ切れるかは分からないけど。
「…珍シイナ。コイツ…人ダ。」
「人…アノ、下等ナ?」
「―――!?」
不気味な声に周りを見渡すと、さっき窓から見た“何か”が近付いてくる。
ここは、外。
つまり私は、
―――魔族が蠢く中に立っていたのだ。