記憶を持つ者
誕生日の前の日の昼。

国王の側近の女性とすれ違った。

なぜ国王がいるのかと言うと、私のﾜｰﾙﾄﾞは一つの国家が統べているからである。

ちなみに青年は、国家が定めた基準をｸﾘｱできた段階で“成人”と見なされ、職に就ける。

青年は規則に縛られ、基準ｸﾘｱのための学校に通うのだが、厳しい環境だ。

成人しない限り、家族と学校の監視下でしか生きられない。成人と同時に自分の家を持つことができ、ある程度の自由が与えられる。

そんなﾜｰﾙﾄﾞで、私は成人したばかりだった。

だから、側近を見て、自分も少しは近い存在になれるかもしれないという憧れの視線を送ったのだ。

すれ違ってから振り向くと、彼女も振り向いていた。
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表紙・目次

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