記憶を持つ者

「…出来る事は、何でも協力しよう。」


「あ、ありがとうございます。」


温かくも冷たくもない、不思議な心地良さ。

低い声が、頭に直接響いて聞こえてくる。

一瞬、本気で思考が停止したが、やっとの事で礼は言えた。
声を出すのもいっぱいいっぱいだった為、声が震えたようだけど…。


「あ…あの、魔王…ちょっと…」


なかなか放してくれない彼に呼び掛けると、頭上から微笑の気配がした。


「私の名は、レンという。
…遠い昔に、捨てた名だ。
だが、覚えておいてくれるか?」


そう告げると、私の頭を軽く撫で、部屋から去って行ってしまった。
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