記憶を持つ者
この時、私は、まだ気付いていなかった。
魔界で、自分がどんな試練に立ち向かう事になるのか。
そして、
“記憶を持つ者”という存在が、いかに危険な立場であるかという事に―――。
「ねぇ白牙。魔王が言ってた事、たまに分からなかったんだけど…名前を捨てたとか…」
「そのうち分かるだろう。もう、巻込まれたんだからな。」
「何に?」
「…この世の行く末を決める争い。
そう言えば分かりやすいか?」
「この世の…って…え??」
「天界も、我々を無視できまい。その為に、敢えて天界と仲の良くない魔界に来て、魔王に護衛を頼んだのだからな。」