記憶を持つ者
その一言で一気に不穏な雰囲気に包まれた室内には、白牙の姿はなく、何故魔王が挑発的なのかを尋ねる程の余裕も、当然なくて。

ただ、自分の身がこの先どうなるのか余計に分からなくなったのだけは、やけにはっきりと理解出来た。


「自力で私に挑み、かすり傷程度でも私に傷を負わせる事が出来れば、返してやろう。」


「自力で…」


「術の指導は白牙に仰げば良いだろう。」


何だか試験のようだと気付いたが、実際はそんなに甘いものではない事を、すぐに痛感する事となる。
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