記憶を持つ者
「ただし。」


そう言葉を切って、魔王はニヤリと不敵に笑った。すごく意地の悪い顔にも、魅力的な顔にも見える。


「私も、精一杯身を守るがな。」


魔王の“精一杯”に、太刀打ちできるのだろうか。

逆に私までやられてしまう可能性の方が高い。

そんなのは、誰もが分かるだろう。


それでも、一度走り出すと自分の意思では止められない性格で…


「絶対に、返してもらうから。…危険な存在なはずがないもん。」


小さい声で付け足した部分も、しっかりと魔王の耳に届いたらしい。
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