記憶を持つ者
その夜、どこか高揚した気持ちで眠りについた。

そしてすぐに、夢で綺麗な声を聞いた。

「…やっと見つけた。本気で間に合わないかと……しかし、まさか能力に乏しい種に生まれてるとは思わなかったからな…。」

その言葉がはっきり聞こえた私は、その声の主にすぐに反論した。

「ちょっと!私が劣ってるみたいに言わないでよ!」

そう告げた後、一瞬、呼吸が止まる。

目の前には、今まで見たことがないほど綺麗な顔があった。男性だと思うのだが、中性的な容姿だった。肌が白く、何よりも目立つ白銀の髪は、私と同じくらい長くて肩甲骨まで届いていた。


「おぉ、ユイ。起きてたのか。」

「何で…」

これは夢。名前を知られてるのは当然だ。何故名を知っているのか聞きかけて、やめる。彼の綺麗な顔を直視するのも、避けたかったから。
< 5 / 97 >

この作品をシェア

pagetop