記憶を持つ者
元いたワールドでは、私の力は眠らされていたらしい。
―――そう聞かされたところで納得できるかと言うと、答えは、
「…うさん臭い。」
私が魔王に宣戦布告をしてしまった後の話だ。
白牙が部屋に来て、突然、呪術の特訓をするというので、さすがに私も、魔王と白牙が何か企んでいると察した。
…のだけれど、自分で身を守れる程度には力を付けたかったから、素直に従った。
魔王は…倒さなくて良い。
でも、あの2匹を返してもらうには…やはり、術を覚える必要がある。
そうして、人質をとられている私の特訓が始まった。