記憶を持つ者
7日目の特訓が終わり、魔界の夜に慣れた私は、城内を散歩してみようと思った。

怒られる事よりも、好奇心が先立ち、廊下に足を踏み出していた。

術が身に着き始めた事も勇気を与えてくれたのかもしれない。


暗くて、広い廊下。

永遠に続いているようにしか見えない。


後ろ手で扉を静かに閉めると、心臓が速く脈打っているのが分かる。

足下すら朧気で、壁に手を着きながら、左右どちらに行くか悩んだ。

いつも特訓する中庭は、部屋を右に曲がった先にある。


ならば、左だ。


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