記憶を持つ者
行く道を決め、無駄に小さくしすぎて苦しくなった呼吸を整える。

そして、目を閉じ、思い浮かべた。


闇を…足下を照らす光―――
行くべき場所へ導く光を。


それは、式神の作り方だ。

何か――紙や武器など――を媒体にしたものの方が強いが、簡単にその場限りのコを作るには、思い浮かべるだけで良かった。複雑な形には出来ないけれど。


自然と両手の掌を合わせ、目と同時に開くと、丁度手に乗る大きさの光る球体が現れた。

やや黄色がかったその式を撫でると、手の上から空へ放つ。


「行こうか。…あの子達の所へ。」


城の冒険は、いつの間にか、さらわれた2匹を捜すものへとすり変わっていた。

< 55 / 97 >

この作品をシェア

pagetop