記憶を持つ者
目的が変わるのは、自分としては珍しい事ではない。
調子によって、目的を調整してしまう。

だから、中途半端なんだ―――と言われた事があるけれど、そんな事を思い出す余裕なんかあるわけがなくて。


2匹を捜し出せるかもしれないと気付いて興奮気味の私は、自分がどこを歩いているのか分からない不安には気付けないまま、光に着いて行った。


1分程真っ直ぐ歩くと、突き当たりではないが、かなり拓けたロビーのような場所に着いた。

右手を見ると、大きな階段がある。光が迷いなくそちらへ向かうが、さすがに躊躇した。


階段の向こうには、
扉―――どの部屋よりも頑丈そうで、豪勢な扉があるのが見えたから。


恐らく、いや、確実に、

あの先には魔王がいる。
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