記憶を持つ者
「ちょっ…そっちはヤバい!戻って!!」
慌てて光の玉を自分の元へと呼び戻し、捕まえた。魔王の部屋なら、番をしている者がいる。無闇に近付くと、その場で殺されかねない。
「…魔王の所にいるよね、やっぱり。まぁ…確認出来ただけでも今日は、良―――」
「本気か?」
「!?」
突如響いた声に驚き、反射的瞼を堅く閉じ、息すら止める。式神は光を弱くし、服の中へ入ってきた。
―――バレた…!
「何考えてるんだ。無理だろうが。」
「それはまだ分からないだろう?」
身を守るのも忘れて固まる私を完璧に無視した会話が、足音と共に階段へ近付いて来る。
私は、見つかっていなかった。