記憶を持つ者
「…分かった。短気だからな、白牙は。
あぁ、答える前に…
―――もう良い。下がれ。」


兵を下がらせる命令を出した声は、最初に聞いた、低くて威圧のある声。

鳥肌がたち、息を飲んだ。

こんな―――声だけで畏縮させる事ができる相手に、どうやったら呪術新米の私が傷を負わせたりできるのだろう。

本気で後悔し始めた私なんかに気付いていない二人は、兵が黒い靄になって消えたのを見届けたのか、再び口を開いた。


「で?答えは?」

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