記憶を持つ者
「ずっと…?」
「今は、その事だけ知っていて下さい。
いずれ…全て知る事になりますから。」
その謎めいた答えに、ヤイバをさらに追及しかけたその時。部屋の戸が開き、背の高い二つの影が見えた。
魔王と白牙だ。
何故こんな真夜中に来るのか不思議だったが、さっき迄自分が盗み聞きをしていたのを思い出し、思わず一歩後退る。ヤイバは私の正面に立ちはだかり、二人と対面していた。
「…名は何と言う。」
夜の闇と似た、低くて重い声。魔王が問い掛けたのは、私ではない。ヤイバだった。
「ヤイバと申します。」