記憶を持つ者
夢を見る間もなく起こされた私は、すぐ目の前にいた人物―――昨日の夢に出て来た男性を確認し、

「変態ッ!!一体何なのよ!?」

などと悪態をつきながら、手近な物を投げた。

当然腹を立てた彼は、眉間に皺を刻み睨んでくる。

…が、

「おとなしくしろ。」

その一言で声が出なくなった。身体も動かせない。

「俺は白牙という。いいか。大事な事だから良く聞け。」

―――何が“大事な事”よ。人の部屋に勝手に入って来て…。しかも何で動けないのよッ!!!


頭にきてそんな事を考えていたのだが、その後私の耳に注がれた彼の言葉は、“小さな”怒りを吹き飛ばして余りあるものだったのだ。
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