明治の双狼-英雄激闘譚-
さしもの藤田とて、この四郎の切れ味鋭い投げには対応できなかった。

為す術もなく体が宙を舞い、直後地面に叩きつけられる!

「…!」

手応えがあった。

試合ならば確実に一本を取れる投げ。

四郎の顔に笑みが浮かぶ。

しかし。

「そんなに嬉しいか?小僧」

倒れたままの藤田が、ニィ…と嗤う。

その表情に。

「っ!!」

思わず戦慄し、四郎は距離を置いた。

…ゆっくりと立ち上がる藤田。

見事に投げは決めたものの、さしたる傷は負っていなかった。

「所詮は武道家…武人ではないか」

藤田はまたも構える。

平刺突の構え。

「どんなに綺麗に投げようと…殺す気で投げねば新撰組は死なんぞ…」

< 40 / 51 >

この作品をシェア

pagetop