工場裏の宇宙ネコ
「さて、
 工場長が来る前に
 残件を進めておこうかね」

そうだ、引力の件がまだだったんだ。
ココロの記憶の事もあるけど、それは時間が押してないから工場長が来た後にしよう。

「引力を説明するには、ちょっと難しい話が必要なんだけど
 ココロは引力ってどういうもんだと思う?」

『ん~と
 こっちにおいで~って感じなの
 おいで~ってたくさん呼ぶと引力が出来るんだって』

「なんとまぁ‥
 質量を持つものには引力が発生するんだけどね、
 ココロは全くそのままの事を言っとるよ」

「昨日のあれは、つまり
 壁がおいでおいでしてたんですかねぇ?」

「そういう事になるかな
 だがね、相当の質量がなきゃあれだけの引力は生まれないんだよ
 例えばこの星位の固まりがないとね」

「どういう事なんですか?」

「原理は分からないけど
 ココロの言うおいでおいでをたくさんするのには、
 必ずしも質量は必要ではないって事だな

 質量による引力の発生は、副産物という裏づけにもなるのか‥
 つまり、質量を持つ物質に、影響を与える事が出来る何かを特定出来れば‥」

博士はそのままブツブツ言って、人差し指を空中にさす仕草で何かを考え始めてしまった。

「博士?」

『博士はどうしたの?』

「ん~、たまにあるんだよ…
 1度考え始めると、誰が話しかけてもダメなんだよね」

「そうかッ!」

博士は大きな声を出して、バタバタとどっかへ走って行ってしまった。

「いつもあんな感じなんだよ
 工場長が来るまでには間に合いそうもないね」

「そうなんだ、
 まぁ、工場長に聞くのはボクからだから大丈夫だよ」

「でも困ったな~
 博士はもう無理そうだし」

ネルビーは両手のひらを天井に向けて、肩をすぼめて見せた。
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