工場裏の宇宙ネコ
「あのさ
 ココロの記憶なんだけど」

「ココロちゃんの記憶?」

『むぅ?』

「昨日気を失った後に、
 ココロの記憶が1つ戻ったみたいなんだよ」

「そうなのかい?
 それはよかったじゃないか」

『あ、歌!
 歌を想い出したの』

「へぇ~歌かぁ
 どんな歌なんだい?」

『聞きたい?
 聞きたいの?』

ココロは口に手を当てて、嬉しそうに言った。
そうなると、ネルビーには聞くとしか選択肢は残されていなかった。
ボクはあの曲をコバルトで奏で、ココロはそれに合わせて歌った。

「へぇ~いい歌だよねぇ
 ココロちゃん良かったね
 こんないい歌が思い出せて」

──その時だった

「そ‥それは!」

いつの間にか研究室の入り口に、見知らぬ男性が立っていた。

「あ、工場長
 よくいらっしゃいました」

この男性が工場長らしい、キッチリとした身なりは外回りの帰りだろうか。

「あぁ、
 ちょっと早く仕事の都合がついてね」

「紹介するね
 こちらが工場長のメルダールさん」

「おぉ、宇宙ネコちゃん元気そうだね
 今はココロちゃんって言うんだってね」

『そうなの~』

やはり、ココロとは面識があるらしいな。
この人は、ボクが知らない頃のココロを知ってるんだ。

「で、こちらがキミの記憶の調査をしてくれてる方だね?
 博士から一通り聞いているよ」

「はじめまして工場長」

ボクは挨拶をした

「ところでキミのそれは‥」

「あ、コバルトですか?
 駅の近くの古物屋で手に入れたものです、
 工場長はこれをご存知で?」

「あ‥あぁッ!いや‥
 そうか、たぶんそこで見たんだな
 うん、きっとそうだ」

コバルトを見た工場長は少しうろたえていた、見たことあるだけでこれ程の反応をするのはおかしいな。
もしかして、これって工場長の想い出の品なのだろうか。
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