工場裏の宇宙ネコ
「工場長?
 このコバルトに思い当たる事があったら
 何でも言ってもらえますか?」

「あぁ、いや…
 昔、それと似たものを持っていたんだが
 どうもうまく弾けなくてね、部下にあげてしまったんだが‥
 まさかそれだったとはね」

あれ?さっきと言ってる事が違うぞ、ボクはちょっと推理の匂いを感じた。

「ちょっと手に持ってよくみてもらえますか?」

「あ、うん」

ボクは工場長にコバルトを渡した。
工場長はコバルトを弾こうとして、それが弾けない事に気がつくと手を止めた。

「間違いない‥これだ‥
 私が昔持っていたものに間違いないよ」

やっぱりそうか、前言と違う事はあえてつっこまないでおこう。

「驚きました
 これの元の持ち主は工場長だったのですね
 ところで工場長はどこでこれをお求めに?」

「いや‥えーと」

この工場長、コバルトの事を何か知ってるな

「実はですね、ココロの過去の記憶を取り戻す調査をしてるうちに
 このコバルトに行き当たったんです
 ボクはね、このコバルトがココロと関係あると思ってるのですよ」

『‥‥』

「‥‥」

ココロもネルビーも、半分出まかせで言ったボクの言葉にぽかんとしていた。

そして工場長は──

「そうか、そこまで調べてるんだ
 絶対に怒らないって…約束してくれる?」

かかった…!工場長って案外人がいいんだな

「やはりご存知でしたか‥
 でも、怒るなんてとんでもないですよ
 ココロの為にぜひおっしゃって下さい」

「えとね‥
 その楽器‥コバルトなんだがね
 その、、ココロちゃんが持ってたんだよ」

──な、なんだってーッ!?

こんな大事な物を、なぜ古物屋に売るんだ‥この人は!
偶然見つけて手に入れていたから良かったものの、普通の人には弾けない楽器みたいだし、もし捨てられていたら…。

「やっぱりそうでしたか」

ボクは物凄く叫びたい気持ちを抑え、平静を装った。
その訳は、ココロがボクの手をつかんでニコニコしていたからだった。

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