天使のいいなり
「ほら臼井達ー。写真撮るから、そろそろカメラの方見ろー。」


先生に言われ、私達はカメラのレンズに視線を移す。


シャッターが切られる、ほんの少し前。

私のジャージから少しだけはみ出てる指の上に、悠斗先輩の手が触れた。


ちらりと悠斗先輩を見ると、目が合って小声で「カメラ見て。」って言った。


緊張しちゃうけど、嬉しさのほうが勝って、顔がにやけちゃうよ。

微笑んだ瞬間、シャッターが切られた。




―――――――………


何の努力もしてない…か。


写真を見ながら、光莉ちゃんの言葉が私の胸を突き刺す。

視界がぼやけそうになったトキ、後ろから足音がした。



「里緒、帰ろう。」

瑞己の声だ…。
ゆっくり振り返り、瑞己を見る。


「あ、本当だね…。なにも言わないで来ちゃったから、珠ちゃん達待ちくたびれてるよね。行こっか…。」





< 166 / 291 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop