天使のいいなり
水野さんが、私とつぐみをテーブルに案内してくれた。


他のテーブルとは違い、1段高いトコロにあるテーブル席。

大きな窓からは、夏だけど柔らかな光が差し込み、大きな観葉植物のクワズイモが両脇に置いてあって、他のテーブルからは見えにくくなっている。

なんか、秘密基地みたいな特別な空間。




バイトをしてて気づいたの。

この席、どんなにお店が混んでいても、水野さんが気に入った人しか通さないってコト。

気に入ったって言い方は少し変かもしれないけど、そのテーブル席にふさわしいお客さんを見極めて通しているっていうか…。




例えば、まだカップルじゃない1組の男女のお客さんが来たトキのコト。

この男の人、告白するのかなって感じがした。

店に入ってきたトキはまだぎこちなかった2人だけど、食事を終えて店を出るトキにはとっても穏やかな顔をして笑っていた。

2人の距離が縮まったのが、目に見えて分かった。

そして、結婚を前提に付き合うコトになったって、水野さんが嬉しそうに話してた。



そんなコトがあって、私は密かに“幸せのテーブル”なんて呼んでたりする。

バイト仲間の拓馬くんに話したら、「俺もそう思ってた。」なんて言ってくれた。




< 171 / 291 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop