天使のいいなり
「里緒。」


私を呼ぶ声。
いつになく真面目な声で。


「最後に、格好悪い男になってもいい?」



コクンと頷くと同時に、悠斗先輩が私を抱きしめた。




「ずっと里緒が好きだった。俺の毎日は、里緒中心だったんだ。あのトキ、ボールを拾ってくれたのが里緒じゃなかったら、声かけなかったよ。………俺と出会ってくれて、ありがとう。」



“ありがとう”って言ったトキ、悠斗先輩の声がちょっと震えてたような気がした。



ありがとう、悠斗先輩。
私に、人を好きになる喜びを、幸せを教えてくれて。


私は悠斗先輩の広い背中に腕をまわし、ギュッと力を込めた。


ありがとう…。






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