天使のいいなり
乗り気ゼロの瑞己を無理矢理引っ張り、3人で似顔絵を描いてもらうコトにした。



だって…。

瑞己との『思い出』が欲しいんだもん。

一緒に過ごした時間も大切だけど、なにか『カタチ』に残るものも欲しいの。



初めて一緒に大学へ向かう途中に、話してくれたコトを思い出した。
瑞己、写真はダメって言ってたから、似顔絵ならいいよね。




絵描きさんは、倉田凪さんといって、私より2つ年上の20歳。
地元の美大に通ってるって教えてくれた。


普段はバイトをしてるけど、週末とか観光シーズンは、こうして絵を描いているんだって。


「たくさん描かないと、あたし上達しないから。路上ミュージシャンみたいなもんよ。それに、こうしてお客さんの生の声を聞けるって、すっごく勉強になるんだよね。」



私たちを見ながら、鉛筆がリズムよく動く。



「里緒ちゃんって言ったっけ?どっちが彼氏?お兄さんのほう?それとも弟くん?」





< 235 / 291 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop