天使のいいなり

●恋のはじまり

私の意識が戻って数日。


状態の悪化も見られなかったので、予定日より早く退院するコトが出来た。
もちろん、定期的に外来通院はしてくださいって言われたけど。



久しぶりに帰る我が家。


「里緒、疲れたんじゃない?お茶にしましょ?」

「うん…。」



自分の部屋へ荷物を置きに行った後、私は瑞己が使ってた部屋に入る。

瑞己が使う前の、プチ物置状態な部屋。
人が寝起きしていた感じが全くない。


瑞己は、ココにいたんだよね?

洗面台を見ても、瑞己が使ってたグリーンの歯ブラシもない。



リビングに行かなきゃいけないのに、私の足は玄関へと向かっていく。

私…、行かなきゃ。




「お母さん、私ちょっと出かけてくる。」

「ちょっと里緒!?ドコ行くの?退院したばっかりなんだから、休んでなさい。」



すぐそばでお母さんが騒いでいるのに、すごく遠くに聞こえる。
お母さんの制止を振り切って、私は家を飛び出した。


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