天使のいいなり
再びセンパイの口が動いた。



ゴクンと飲み込んで、いつものくしゃくしゃの笑顔。

「うまい。」


…え? 
嘘でしょ?
だって激甘だよ。端っこのほうとか、ちょっと焦げてるし。


「センパイ、気を遣わないでください。美味しくないですよ。」

「甘くて懐かしい。母さんの玉子焼きに似てる…。もう2度と食べれないと思ってたのに。」


お母さん…?
2度とって、まるで…。

きっと私はキョトンとした顔でいたんだろう。


「明仁から、なにも聞いてない?……か。」


コクン。



「ペラペラ話すコトじゃないもんな。俺ね、母親いないんだ。俺が小3のとき、ガンで亡くなったんだ。」


全然知らなかった。
お母さんが亡くなってたなんて。





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