唇を青く染めて呪いの謳を謳いながら【長編集】
『立ち話も何ですから家へお入りください。
鍵は開いています』
とても優しい声だった。
私は取っ手を握って
ひねった。
するとドアはぎいと音を立てて
開いた。
玄関には美しい女性が立っていた。
「初めまして。えーと桑嶋 綾子さんですよね」
彼女は微笑んだ。
何故私の名前を知ってるのか
「名前は、ほら。同じマンションだしよく見かけるから覚えたの」
彼女は私の心を読んだかのように
言った。
「ささ、居間へどうぞ」