愛しいキミへ
この当たり前のことが今の俺を一番安心させる。

寝ている沙菜の横に腰を降ろして、沙菜の顔にかかった髪をそっとはらう。
無防備な大好きな人の寝顔。
胸がきゅーっとなった。
──触れたくて仕方がなくなった。

付き合って3ヶ月。
キスすらしていない。

「…沙菜。」

俺の声も行動も夢の中の沙菜には届いていない。
すーすーと小さく寝息をたてている。

そっと頬に手を添える。

─好きだ

眠っていて、うつ向いる顔を少しあげる。

─大好きだ

少しずつ顔を近づけ瞳を閉じた。









「悠…ちゃん…。」

沙菜の声で我に帰り、瞳を開けた。
まだ、眠っている。
沙菜の寝息が顔に当たるほど近づいていた。
あと少し・・・少し顔を前に出せば、唇が重なる。
触れることが出来る。

だけど─
近づくことが出来なかった

あと5cm
あと5cmが遠かった。

近いようで俺と沙菜の距離は遠いんだ。
この距離を壊しちゃいけない。

震える唇に力を入れ、頬に添えていた手を離し、顔遠ざけた。

ふーっ
息を深く吐く。
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