愛しいキミへ
由香利は俯いたまま何も言わない。
二人の間に静かな時間が流れる。
遠くから子ども達の遊ぶ声が聞こえ、由香利が鼻をすする音を消す。

「…ホントにごめん。」

気まずい時間に耐えられなくなり、一言だけ残して由香利の前を去った。
由香利は俯いたまま・・・何も言わずに座っていた。


走ってマンションまで帰った。
息が上がったままエレベーターが来るのを待つ。

「ハァ、ハァ、…っ俺って最悪だ…。」
「何で?」
「!?」

後ろから声を掛けられ、驚いて振り向くと、私服の沙菜の姿があった。
きょとんとした顔で見つめてくる。
何で今会うんだよ〜・・・

「何で最悪なの?てか、何でそんなに息切れてんの?」

ポーン
エレベーターが到着し、二人で乗り込む。

「や…え〜っと…運動不足だから…ランニング?」

しどろもどろになりながら誤魔化す。

「何で疑問系なの?汗すごすぎ。」

コロコロ笑いながら、バックからハンカチを取り出し差し出してきた。
その時ちょうどエレベーターが俺と沙菜の家がある階につき揃って、エレベーターから降りる。
差し出された、沙菜の可愛いハンカチ。
・・・汗拭くのに使うのもったいねぇ〜
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