愛しいキミへ
──き

──まさき

遠くに沙菜の声を聞いた。
・・・また夢か
また幻想の中で傷つくのか

夢かわからない、感覚のない中で、静かに目を開けた。

霞む視界中に、沙菜の顔が映った。
さっきの夢とは違い、泣いてない。

「…沙菜?」

去っていかないようにと、手を伸ばし、沙菜の頬に触れる。
すると、沙菜は俺の手を包むように握った。

「もう…連絡とれないと思ったら…何寝込んでんのよ。手、熱いよ。」
「は?あれ…これ現実?」
「何ばか言ってんの?ほら、熱計ってみて!」

寝ぼける俺に体温計を差し出した。
沙菜に言われるまま、体温計を受け取り、熱を計った。
ピッ
沙菜がクーラーの電源を入れる。
消したまま寝てしまっていたため、部屋にはむわっと熱気が充満していた。

「何で…っくしゅ!何で、俺の部屋にいるの?」

体温計を気にしながら、起き上がる。

「メールくれたくせに、連絡とれないから、心配できたの。あの後、何回かメールいれたんだよ!」

俺の肩に寄りかかるように、ベッドの端に腰かけた。

「ちょっと怒ってやろうと思って来たのに、汗すごくて、顔赤いまま寝ててびっくりしたよ〜。」

──ピピピピ
体温計を見て、びっくりしたのは俺だった。

「38.2℃!?」

何で熱あんの!?
驚いていたら、沙菜に体温計を奪われた。

「やっぱり。寝てなさい。」

体を強く押されて、ベッドに倒された。

「夏に熱出すなんて、ばかじゃないの?」
「うるせっ。」
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